2018年1月13日 (土)

11月号の歌

せみしぐれ小暗い森に響くほどひんやりとする夏の身体は

指二本でひろげる君の表情が笑顔とわかる向日葵畑

旅に出た君がふらりと寄りそうで覗いてみたい猫の集会

熱あてて熱こもらせる夏の髪ゆびでといても縺れるばかり

突き上げた指揮者のてのひらの中に最後の音が吸われて消える

会計学を学んだ日々は遠くなり笊目のあらい家計簿つける

三等星までと言わずに見せてほしい身体が浮かぶほどの夜空を

(塔2017年11月号掲載歌・小林幸子さん選)

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9月号5首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(沼尻つた子さん)

2017年12月 8日 (金)

10月号の歌

ゆびさきにむせるみどりの濃きにおい初夏のトマトの茎にふれれば

朝八時アメリカ国歌と君が代がつづけて流れくる基地の町

一日分の野菜のカレーを食べながらまだ終わらない今日のいちにち

霜月に生まれたことの寂しさでひかれあったのだとしても恋

検索窓に「会」と入れれば「会社辞めたい」の言葉が二番目に出る

炭酸のはじける方へ呼ばれたい夏には夏の名で呼ばれたい

言い分と言い訳の間のかすかなるゆらぎ明日は晴れるでしょうか

(塔2017年10月号掲載歌・新樹集・吉川宏志さん選)
(作品2・前田康子さん選)

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久しぶりに新樹集に載せていただきました。

2首目。長く暮らしているわりには最近になって気づいたのでした。
ベランダで洗濯物を干していたりするとよく分かります。

8月号2首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(斎藤弘子さん)

2017年11月 2日 (木)

9月号の歌

春に咲き春に散る花はらはらと君の背中を見送る四月

カレンダーどおりに生きる人たちが五月の谷間を歩く靴音

霜柱のような衣がよいと言う天ぷら職人の指しなやかに

橅、桜、オリーブならぶ木べらからやがてソースの香が立ちあがる

そこで(笑)うなよと思う夜こころはまっすぐ飛ばしてほしい

炎天に小さき獣の列となりスラヴ叙事詩を人は見にゆく

ひとりだと思わなければひとりではなかったんだと気づく水無月

(塔2017年9月号掲載歌・山下洋さん選)

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7月号5首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(近藤真啓さん)

2017年10月30日 (月)

8月号の歌

噛むことは生きてゆくこと みどりごの歯に新しい季語は生まれる

さとこさんと歌会で呼ばれ私の中のわたしがほんのり灯る

吟行の土手に教わる草の名はのげし、すかんぽ、きつねのえんどう

本心をかくしてとじるミステリー自白しそうにふくらむかばん

理解、恋、病、判断あれこれと苦しむことはあり日々は行く

トリノ駅を「鳥の駅」と聞く耳を持つ それをひとつの幸せとする

(塔2017年8月号掲載歌・池本一郎さん選)

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6月号3首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(木村珊瑚さん)

…ブログの更新を1か月忘れていました(^-^;

2017年9月 6日 (水)

7月号の歌

鑑定士になって桜の街を行く あれは二分咲き、これは五分咲き

花曇り、鳥雲に入る、鰊空 春はやさしく紗をかけてゆく

薄目あけ確かめている早朝の時計の針がやわらかくなる

いつの世のどこで会ったのかと思うかすかに記憶をくすぐる人と

首にある七つの骨をゆるませてしばしまどろむヒトとキリンは

てのひらがただ穏やかで泣けてくる何てことなき春の日なのに

(塔2017年7月号掲載歌・栗木京子さん選)

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2017年8月 8日 (火)

6月号の歌

養生中の札をかけられ細き枝かさかさと鳴る冬のひだまり

ホットヨガのレッスンを待つ十五分ふつふつと熱こもらせる髪

読みかけの歌集におとす栞紐うたの背筋にゆったりと添う

巣立ちゆく子供ふたりを見届けて幸福の木は葉をみな落とす

あかねさすティーダさよなら十年経て後部座席に子のいない春

(十年=ととせ)

(塔2017年6月号掲載歌・三井修さん選)

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4首目の幸福の木、ほとんど枯れ木状態になっていたものが、今はまた葉を繁らせていますclover
金沢の厳しい冬もベランダで越した強い子で、もう30年の付き合い…植物の生命力はすごいなぁ、と思います。

2017年7月 4日 (火)

5月号の歌

ころんだら落とすいのちと思いつつ冬の横断歩道を渡る

不本意なことは日々ある垂れこめた雲の上には満月がある

マグカップで指先あたためつつ握りそっとすべらす猫背のマウス

名の上の故の字さびしむ私のときは知らずに過ごしてほしい

弦楽のうねりがむずかる子のようでヨガのポーズがゆらいでしまう

廃屋の壁めきめきと新しい色を見せつつ壊されてゆく

(塔2017年5月号掲載歌・江戸雪さん選)

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3月号7首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(千葉なおみさん)

2017年6月 3日 (土)

4月号の歌

「くつしたちゃん」と呼ばれる猫の靴下に長いものあり短いものあり

チューニングの音のうねりは一点に絞られたのち空気に変わる

チェロの弦は指にあかるく弾かれて冬の心をのびやかにする

千年をもつといわれる羊皮紙のひつじの記憶たどりゆきたい

綺麗事ときれいなことは似てるけどインクの染みる加減が違う

エラー音に止まるルンバを背中から抱えて戻す 亀のようだな

『虚実妖怪百物語』を読みながら長くて深いお辞儀見ている

(弾かれて=はじかれて)
(虚実=うそまこと)

(塔2017年4月号掲載歌・永田淳さん選)

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2月号4首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(清水弘子さん)

2017年5月12日 (金)

3月号の歌

何度でも窓をひらいてたしかめる東の空の虹の気配を

惜別のこころで見ればなにもかも夕陽の色にかわる教室

金色の陽をまとい来よ枯野より子はやすやすと老いてゆくから

波頭ただまぶしくてその夏に別れた人が美しくなる

君は少し泣いた?と問われ立ち止まるその旋律を胸にひろげて

眠たくて祈りのように傾けた首はすべり台のさびしさだ

霜月の初雪は午後も降りやまずしんと冷たい夕刊届く

(塔2017年3月号掲載歌・前田康子さん選)

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2017年4月19日 (水)

2月号の歌

宍道湖に真雁は群れる行く秋の落穂、二番穂ついばみながら

笑顔には魔除けの意味があるという埴輪の中のひそやかな闇

成長が神話の時代オリオンの振りかざす腕の先の混沌

パンフレット五十冊分の時は行く君とシネマの闇をかさねて

筆跡のとがりに低い声を汲む君と五年の交換日記

真夜中の雨に気づいて耳じゅうが雨音になる眠りにとける

(塔2017年2月号掲載歌・山下洋さん選)

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12月号2首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(吉岡昌俊さん)

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