« 2012年9月 | トップページ | 2012年11月 »

2012年10月

2012年10月31日 (水)

079:帯(紗都子)

温帯のやさしさが好き手を振ればやわらかい風を返してくれる

078:査(紗都子)

探査機が月を走ればひんやりと頬をかすめる十月の風

077:転(紗都子)

異文化をかすか見せて壇上の転校生はあかるく笑う

076:桃(紗都子)

キッチンに桃の香りが満ちてゆく足音だけであなたがわかる

075:溶(紗都子)

チョコレートの溶けるはやさで夏の日はくたくたになる眠りたくなる

074:無精(紗都子)

伸びきれば無精髭ではなくなるし君は砂漠の人ではないし

073:庫(紗都子)

放課後の開架書庫にて語り合うささやく声を床に落として

072:狭(紗都子)

狭すぎる世界だったね星にまで手が届くよと歌ってたのに

2012年10月30日 (火)

071:籠(紗都子)

自転車のからっぽの籠がうれしくて日曜日には遠くまで行く

070:芸(紗都子)

趣味として手芸を挙げる少女たち指にほのかな自慢を見せて

069:カレー(紗都子)

それぞれの家のカレーを確かめる公認カレー鑑定士たち

068:巨(紗都子)

巨大化を抑えきれないズッキーニだだだだだっと斜めに切れば

067:鎖(紗都子)

午後五時の連鎖反応ひとりずつ秘めた話をほどきはじめる

066:息(紗都子)

おだやかにうごく胸です生きている息をしているひとだったから

065:酢(紗都子)

やさしいお酢ばかり使えばやさしさの基準がいつかわからなくなる

064:志(紗都子)

その意志はこころに刺さる揺るぎないものが誰かを傷つけている

063:久しぶり(紗都子)

久しぶりと言いたかったの会うことは挨拶をすることだったから

062:軸(紗都子)

ぶれている軸を戻してくれるのは淡い言葉と薄いてのひら

061:企(紗都子)

密室で企てられた計画が日にさらされてしゅわりと消える

2012年10月29日 (月)

060:プレゼント(紗都子)

プレゼントによろこぶ顔を思い出す古い絵本を夜にひらけば

059:貝(紗都子)

ささやかな貝殻骨にふれるとき子どもをまもる鎧と思う

058:涙(紗都子)

降りだした雨のようです落涙はまわりの色を一気に変えて

057:紐(紗都子)

縄になるはずだった紐のかなしさよ来世はもっとのびやかであれ

056:晩(紗都子)

晩秋のしんと静まる公園に犬とわたしがループをえがく

055:きっと(紗都子)

「たぶんね」と軽くこたえるリフレインさせる「きっと」は見せないままに

054:武(紗都子)

その夏の武勇伝として真夜中に羽化する蝉を見にいったこと

053:渋(紗都子)

渋柿の渋が抜けゆく不思議さと思えるほどの心変わりだ

うたらばブログパーツ短歌「走」

助走から疾走までにあったこと君に話そうひと夏のこと

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

田中ましろさんプロデュースの「うたらば」ブログパーツ短歌テーマ「走」に採用していただきました。
今回は過去歌から。
応募総数494首だそうです。
そして1年ぶりに表紙フォト短歌にも選んでいただきました。
とても綺麗な写真なので是非ご覧くださいませ♪

次回テーマは「細」〆切は11月11日です。
詳しくはこちらまで。
   ↓
 

http://www.utalover.com/

2012年10月21日 (日)

052:世話(紗都子)

草花を世話するひとの肩越しに雨をいざなう雲が来ている

051:囲(紗都子)

囲まれて花束を抱くありふれた家路はひかる滑走路です

050:活(紗都子)

ワクチンは不活化となり甘やかな毒をだれもが忘れてしまう

049:敷(紗都子)

鍋敷の熱ゆるやかにさめていきくぐもる声がぽたりと落ちる

NHK短歌11月号

兎追うアリスの落ちた穴ならば罠であっても飛び込むだろう

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

お題「罠」で坂井修一さんに佳作に選んでいただきました。

2012年10月19日 (金)

048:謎(紗都子)

鞄から些細な謎をとりだして煙に巻いてみせてごらんよ

047:ふるさと(紗都子)

すりきれた絵本の中のふるさとはにじむばかりの水彩の色

046:犀(紗都子)

天上に浮かぶ小さなてのひらが金木犀の香を撒いている

045:罰(紗都子)

罪あれば罰もあります時を経てかたちを変えてゆく白い雲

044:ドライ(紗都子)

ひりひりとはりついているまなざしがドライアイには眩しいのです

043:輝(紗都子)

輝きは消えても色は変わらない失敗談に何度も笑う

2012年10月18日 (木)

042:稲(紗都子)

稲妻は稲を実らせゆくひかりあなたの頬をあおく照らして

041:喫(紗都子)

ささやかな仮面をかぶる人として漫画喫茶の闇にとけこむ

040:勉強(紗都子)

なにごとも勉強だよと言う人の学びの成果を見たことがない

039:蹴(紗都子)

蹴りあげた球の軌跡を目で追って風の音しか聞こえなくなる

038:的(紗都子)

詩的にはならない言葉ならべつつ真空パックに鋏を入れる

037:牙(紗都子)

角よりも牙もつものが怖いことあなたはきっと知らないでしょう

オトナの補習授業

うっすらと眼鏡をくもらせる君のやさしささえも湯気の一部だ

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

10/16にNHKラジオ第一放送で放送された「オトナの補習授業~短歌・日記をつけるように~」という番組で、東直子さんに採用していただきました。(放送外)
「見る」という行為を通して詠んだ歌、ということでイメージするのがちょっと難しかったです。
投稿数167首は7/3の前回とほとんど同じですね。
知っている方の歌が沢山あって楽しかったです。

番組HPは、こちら。
  ↓
http://www.nhk.or.jp/r1/otona/

2012年10月17日 (水)

036:右(紗都子)

右側に風を添わせて左にはからめるためのゆびを泳がす

035:むしろ(紗都子)

博識というよりむしろ奇人だが抗いがたい引力のひと

034:聞(紗都子)

寡聞にして知らぬ噂を積みかさね世間はまわる回りつづける

033:滝(紗都子)

その滝が氷に変わる瞬間をあなたはきっと見たのでしょうね

032:詰(紗都子)

質問が詰問にかわる放課後にこころを石に変えたのでした

031:大人(紗都子)

大人しいと言われることが厭だった褒め言葉だとわかっていても

030:敗(紗都子)

はじめての敗戦投手のようだった折りたたまれた背中ちぢめて

029:座(紗都子)

教室にならぶ座席はそれぞれの子の体重を支えてきしむ

2012年10月16日 (火)

028:脂(紗都子)

音たててとろけてしまう牛脂にもあわく獣の気配はあって

027:損(紗都子)

損失は補償しません最初からリスクがあると言ったのだから

026:シャワー(紗都子)

にぎやかなライスシャワーを浴びながら歩くふたりに影は見えない

025:触(紗都子)

ぺたぺたと触れては逃げる子の指のあまいにおいが漂っている

024:玩(紗都子)

玩具にはやさしい歯型ミニチュアのようなパーツを持つひとだった

023:必(紗都子)

必要のないものばかり集めては満たされてゆく子供の時間

022:突然(紗都子)

すみません突然ですが突然と言えばすべてが許されますか

021:示(紗都子)

荒れ果てた掲示板にもささやかな良心があり更新される

2012年10月15日 (月)

10月号の歌

はつなつの熱を集める瓦屋根雪の白さでひかりを弾く

水星を「みずほし」と読む指先のたどたどしさがいとおしいのだ

共感と共犯は少し似ているね とらわれないで逃げておいでよ

掲示した紙はおそらく君の目の高さなんだね夏のはじめの

知ることと忘れることをくりかえし凪でいられる海なんだろう

よるべない心と思う次々とつまびかれゆく音のつらなり

(塔2012年10月号掲載歌・池本一郎さん選)

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

飛鳥井和子さんの十首選に選んでいただきました♪
(7月号5首目の歌です。)

塔10月号は十代・二十代歌人特集なのでまぶしいですshine

2012年10月11日 (木)

020:劇(紗都子)

さようなら劇中劇の恋人のようにわたしを抱きしめるひと

019:そっくり(紗都子)

ほんとうにパパそっくりと言われても会えない人のことは知らない

018:希(紗都子)

残された希望でしょうか降りそそぐ花、花、光、ひかり、まぶしい

017:従(紗都子)

血縁をあわくにじませ従姉妹たち駈けおりてゆくたそがれの坂

うたらばvol.06「入道雲」

うつむけばのしかかる空に首すじをきしませながら蟻を見ている

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

更新が遅くなりましたが、田中ましろさんが作成されているフリーペーパー「うたらば」vol.06「入道雲」に採用していただきました。
淡いグリーンのすてきな写真と共に掲載されています。
6誌連続は自分でも出来すぎと思いますが、とても嬉しいです。

次回のフリーペーパーのテーマは「鍵」
くわしくは、こちらから。うたらばのサイトです。
  ↓
http://www.utalover.com/

さて、あと7週間で題詠blog完走できるでしょうか…sweat01

« 2012年9月 | トップページ | 2012年11月 »