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2010年11月 9日 (火)

題詠blog2010まとめ

001:春
春浅い海の水はまだ冷たくてしびれた指に藍がからまる

002:暇
暇があれば会おうね(だけど暇だとは言わないくせに)三月の雪

003:公園
公園に待ちくたびれた影ばかりのびて踏まれて夜にとけこむ

004:疑
遮光カーテン閉めればふいに闇になり疑心暗鬼がくっきり浮かぶ

005:乗
偶然に乗り合わせたね、この星に輪廻の果ては知らないけれど

006:サイン
サインする君の右手は案外と小さく見えた 強くなりたい

007:決
決め手にはならないほどのやさしさにふれた気がした今を抱きしむ

008:南北
星を見て東西南北知るように標としたい背中がひとつ

009:菜
たどりつく指から染まる思い出の菜の花畑は人待ち顔に

010:かけら
無防備な未来を分かちあった日の君のかけらは手のなかにある

011:青 
青い薔薇は問いかけている望むものすべて手にしたあとの望みを

012:穏 
行きましょう春は名のみの寒さでも喫水線が穏やかならば

013:元気 
挨拶に問われるだけの「元気」なら機械のように繰り返せます

014:接 
足裏を地球に接し手のひらを君に接して安寧となる

015:ガール 
ありふれたボーイ・ミーツ・ガールこそ普遍のつよさと君は笑った

016:館 
旧館と新館をつなぐ回廊にしゃがんで今を拾いあつめる

017:最近
「さいきん」と言葉にすれば最近は少しふるびて舌にはりつく

018:京 
なにもかも美化されてゆく背景に昭和をまとう東京タワー

019:押 
半押しのシャッターずっとそのままに見つめていたい風景がある

020:まぐれ 
気まぐれを美徳としない君といてあぶり出されるこころのかたち

021:狐 
母の手がつくる狐のかげを見た白い障子はあたたかかった

022:カレンダー 
カレンダーやぶく季節の裂け目から未来のようなものの手ざわり

023:魂 
機上より見おろす白い雲の群れ羊あるいは魂として

024:相撲 
やわらかな拒絶ののちの微笑みにひとり相撲の結末をみる

025:環 
環状に閉じた心をひらく鍵なくしたままに今を生きてる

026:丸 
ぎこちなく我が子を抱けばたよりなきこころの隅に丸(まろ)き花咲く

027:そわそわ 
授かりし命は重くあたたかい そっと見下ろす睫毛そわそわ

028:陰 
日陰にも育つ花ゆえ愛よりも気ままな風に生かされている

029:利用 
図書館の利用者まばらになる夜のあかりにとけた言葉がにじむ

030:秤 
目盛なき秤のように大らかに吾子をささえる母でありたい

031:SF 
SFの入口として幾たびも我をいざなう夏への扉

032:苦 
その毒がいつか薬に変わるとき飲めるといいね苦き言の葉

033:みかん 
秋冷をたずさえてきた君の手に香るみかんの愛しきおもさ

034:孫 
海はるか生まれたものの子孫なる我が身ざぶりと揺らすバスタブ

035:金 
金色に滴るひかりにとかされて思い出となる蓮華メレンゲ

036:正義 
ふりかざす正義の果ての徒花の如くひろがるナガミヒナゲシ

037:奥 
耳の奥たゆたう海をあふれさせざざんざざんと歩く夏の夜

038:空耳 
空耳になったのでしょう降りしきる雨にこぼれた愛の言葉は

039:怠 
倦怠はやさしい時間みちている水と空気とあなたとわたし

040:レンズ 
黙々とレンズをみがく傷なんか忘れなさいとつぶやきながら

041:鉛 
きみどりの色鉛筆を持つ指のにがくしたたる真夏のにおい

042:学者 
星を見て無限をうたう瞳には学者のような孤高のひかり

043:剥 
剥きだしの感情ひとつ抱きしめて流されてゆく渋谷坂下

044:ペット 
六月の空の高みに打ち上げたペットボトルは神になりたい

045:群 
群れにいる覚悟むれから出る勇気もたざるものが沈む水底

046:じゃんけん 
心ここにあらずの顔で差しだした この手はじゃんけんさえもできない

047:蒸 
蒸すことは穏やかな熱をたもつことタジン鍋かこむ砂漠の民は

048:来世 
来世など信じる気持ちになっている病院帰りのバスにゆられて

049:袋 
あまえたい思いをぜんぶ飲みこんだ有袋類になりたい夜に

050:虹 
傷ついて膝をかかえる地の果ては虹の生まれる場所かもしれない

051:番号 
番号で呼ばれるときは体温をやや低くして席をはなれる

052:婆 
湯湯婆を抱くきみの背がまるくなりさら湯のような吐息をこぼす

053:ぽかん 
ぽかんぽかん寂しい音を響かせる日々空洞を深くしながら

054:戯 
戯言と笑いとばしてほしかった清澄白河駅二番線

055:アメリカ 
くちびるがつよがりを言うアメリカンチェリー無邪気に光らせながら

056:枯 
枯草に焔のにおう冬の野辺きみの背骨のかたちをなぞる

057:台所 
あかときの台所に立つ君の手がオムレツふわりとゆらす煉獄

058:脳 
電脳がぬばたまの夜をぬりかえて光る画面にしずむ足あと

059:病 
得るものか失うものか病とは要再検査の文字は暗色

060:漫画 
思い出の『りぼん』をほどきあまやかな少女漫画に時をかさねる

061:奴 
「好きな奴いるの」ではじまる恋があり秘めた思いは爪先あたり

062:ネクタイ 
ぎこちなくネクタイむすびうつむいて玄関を出る逆光のきみ

063:仏 
ももいろで表紙にしるす仏蘭西語十七歳の春はけだるい

064:ふたご 
ふたご座のひとりっ子だというきみは人待ち顔で宇宙をあるく

065:骨 
木枯らしを避けて子猫とたわむれるきみの背骨が透ける黄昏

066:雛 
わたくしはまだ死にません雛罌粟がうなずくように揺れているから

067:匿名 
匿名の足跡ばかり重なって乾いた土にきみの涙を

068:怒 
庭に落ち「み」と甲高く鳴く蝉の怒りのような夏の終焉

069:島 
星たちが島のようです仄暗い銀河をおよぐプラネタリウム

070:白衣 
午後二時の実験棟へ向かうとき白衣はきみのこころを閉ざす

071:褪
ゆびさきの形にそって色褪せるマウスは私の決心を知る

072:コップ
たよりなくゆがんでしまう紙コップに指ぬらしつつ夏を見送る

073:弁
弁解をすれば冷えゆく胸の底九月の雨は何も言わない

074:あとがき
あとがきにしるす思いとしるさずにしずむ思いをなみ縫いにする

075:微
待つことも待たれることもいとしくて微かな風が吹きぬけてゆく

076:スーパー
かけちがうボタンのように遠ざかる君が乗りこむスーパーはくと

077:対
対岸を歩くあなたが見えなくて視線は空にはりつけられる

078:指紋
日にやけた肩に指紋が残るほど抱きしめている海沿いの道

079:第
夏に聴く第九のような違和感をおぼえた朝のとおい世界へ

080:夜
眠れない夜にひらいた携帯のタイムラインがまだ流れない

081:シェフ
休日のねむりをさますポタージュに私のシェフが魔法をかける

082:弾
ほうせんか弾ける種子のあかるさで君が笑ってくれたのだから

083:孤独
ふれあったその瞬間に受けとめる深い孤独も恋としておく

084:千
ざくざくとこころに穴を掘り埋めた千の言葉はさみしくないか

085:訛
ぬけきらぬ訛のようによりそってひと雨ごとの春をむかえる

086:水たまり
長靴で立てば空まで落ちてゆく水たまり鳥ふたりきり森

087:麗
小市民の脆きうつわを磨くとき日は麗麗と窓より来たる

088:マニキュア
マニキュアを乾かすまでのつかのまの伏し目のときに消える残像

089:泡
産声がさざ波たてる海に来て泡立つものをかぞえて帰る

090:恐怖
深々と恐怖に支配されながら尚もかがやくものをさがして

091:旅
手の甲をなでる小さな風ひとつ旅はしずかにおわりを告げる

092:烈
片恋のかたく結んだ唇に烈しい風が吹きつけて 冬

093:全部
なだらかな坂を見おろす視線なら全部あなたを忘れてゆける

094:底
千切りの大根なべにすべらせてよどむ底より思いわきたつ

095:黒
直筆の強さ弱さを受けとめた心ににじむひとすじの黒

096:交差
不意打ちの心地よさだね交差する視線はずせば戻れなくなる

097:換
退屈を君にあずけて引き換えた切符の行先はまだわからない

098:腕
利き腕のちがうあなたと手をつなぐ大事なものを持ちよるように

099:イコール
イコールで結ばれているふたりなら誤差もやさしいスパイスになる

100:福
祝福を受けた春から二十年のちも並んで空をみている

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コメント

紗都子さんこんにちは^^

私もようやく走り終え、みなさんの100首をゆっくり読んでいます。
どれも詩的で、読んでいて心が満たされるようななんとも言えないうれしい気持ちになりました。
いろいろと歌集も読まれているんだろうなー。

好きな10首。

001:春
春浅い海の水はまだ冷たくてしびれた指に藍がからまる

 結句にしびれました!藍という文字からは藍色の水、アイという音からは愛が浮かんで、冷たい水から指をだせない一瞬がとても長く感じられます。


009:菜
たどりつく指から染まる思い出の菜の花畑は人待ち顔に

017:最近
「さいきん」と言葉にすれば最近は少しふるえて舌にはりつく

037:奥
耳の奥たゆたう海をあふれさせざざんざざんと歩く夏の夜

041:鉛
きみどりの色鉛筆を持つ指のにがくしたたる真夏のにおい

047:蒸
蒸すことは穏やかな熱をたもつことタジン鍋かこむ砂漠の民は

056:枯
枯草に焔のにおう冬の野辺きみの背骨のかたちをなぞる

071:褪
ゆびさきの形にそって色褪せるマウスは私の決心を知る

072:コップ
たよりなくゆがんでしまう紙コップに指ぬらしつつ夏を見送る

074:あとがき
あとがきにしるす思いとしるさずにしずむ思いをなみ縫いにする


私はどうもゆびフェチらしくて、指のお歌ばかりになってしまいましたが、「にがくしたたる」という表現や、紙コップやあとがきの視点はとくに、惹かれました。


イマイさん、こんばんは。
わ、ありがとうございます!
丁寧に読んでくださって嬉しいです。
完走した後は何だかぼーっとしていたのですが、素敵なコメントを拝見してシャキッとしました☆
イマイさんが選んでくれた歌と自分のお気に入りは似ているような気がします。
指の歌、つい詠みたくなってしまうんですよ(^o^)

歌集はそんなに読んでいないんですよー。
いつももっと勉強しないといけないと思いつつ…(^_^;)
いい歌集があったらおしえてくださいね。

私もこれからゆっくりと皆さんの題詠百首を見にいこうかな♪

いまさらなのですが、題詠、じっくりと鑑賞させていただきました。選歌させてください。


暇があれば会おうね(だけど暇だとは言わないくせに)三月の雪

「さいきん」と言葉にすれば最近は少しふるびて舌にはりつく

空耳になったのでしょう降りしきる雨にこぼれた愛の言葉は

来世など信じる気持ちになっている病院帰りのバスにゆられて

ふたご座のひとりっ子だというきみは人待ち顔で宇宙をあるく

木枯らしを避けて子猫とたわむれるきみの背骨が透ける黄昏

片恋のかたく結んだ唇に烈しい風が吹きつけて 冬

なだらかな坂を見おろす視線なら全部あなたを忘れてゆける

暇、来世、骨はとくに好きな歌です。
「暇」は、春の寒さとやりきれない想いが雪のイメージとともにしんしんと伝わってくるようです。
「来世」は、個人的な詠みでは「私、死ぬかも知れない」というはっきりとはしない不安なのかな、と思いましたが、何回か読むと誰か大切な知人のお見舞い帰りなのかなとも思えました。どちらにせよ、限りある命の延長を来世に求めるという漠然としたせつなさに惹かれたのですが、うたらばの助手席の歌と同様、結構深い想いを歌っているのにこれみよがしな言葉使いではなく、優しく響くところがすごいなあと思いました。


来年も楽しみに読ませていただきます。完走おつかれさまでした☆

こゆりちゃん、こんばんは。
選歌と鑑賞ありがとう!
とってもうれしいです(^o^)
「来世」の歌はお見舞いっぽい気分の歌なのですが、たしかに自分のことという読みもできますね。
そうであれば余計に内面の寂しさが際立ってくる感じがします。
今年の題詠はやたら時間ばかりかかってしまって大変でした。
去年は結構気楽にやっていたのに全然進まなくて。
でもなんとか完走できたからよかったんだけれど。
来年はどうしようか迷っていますが、また皆が走り出したらつられてついていってしまうかもしれません(笑)
こゆりちゃんも題詠、完走されたんですね。お疲れさま!
ゆっくり鑑賞させていただきます♪

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