2019年6月 5日 (水)

4月号の歌

零度未満の白やむらさきひろがって年あらたまる頃のしずけさ

月見れば千々に悲しむ心など持たず私は月が好きです

窓縁にぐんと身体を乗りだして月の写真を一枚撮った

私の好きな味だけ残されてほのかに香るキャンディ袋

ひらがなにひらくことばのやわらかさあなたの話すあしたはきっと

(塔2019年4月号掲載歌・なみの亜子さん選)

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

月刊うたらば5月号「飲」

夕焼けを飲みこむような苦しさもあるためらわず恋に生きれば

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

月刊うたらばテーマ「飲」に採用していただきました。

フリーペーパー最新号うたらばvol.24「約束」佳作集にも1首掲載されています。
         ↓
http://www.utalover.com/index.html

2019年5月 7日 (火)

3月号の歌(2019)

木枯しの吹かない冬のはじまりにショートブーツの踵を鳴らす

鳥を飼い犬を飼う日々少女期は半透明の付箋のそよぎ

ガリ版の原紙を透ける教室のひかり かすかな埃の色の

絹目とは艶なき写真 好きだったその手ざわりを指は記憶す

リリシズム夢ばかり見るてのひらに次から次へ雪をとかして

ポケットに小春日和をしのばせてあなたの冬の肩をたたいた

(塔2019年3月号掲載歌・山下洋さん選)

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

NHK俳句5月号

薬湯のほのかなかをり春寒し

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

2018年度選者の最終回。
兼題「春寒」で星野高士さんに佳作に選んでいただきました。

 

2019年4月 2日 (火)

2月号の歌(2019)

緑屋と自らを呼ぶ造園家百年のちの木々を見すえて

荒れ地には十万本の木を植えてその後は人の手を加えない森

ダンゴムシにも日本古来のものがあり神宮の森に生きながらえる

逃げてゆく獣の脚はさびしくて濡れた翼をたたむ鳥たち

十月の夜は冷えるね十三夜の月はまぶたの形にひかる

暗がりでひらく瞳のみずうみにあなたが石を投げて それから

のこされた車内に静寂おしよせて耳の底方をめぐる血の音

(静寂=しじま、底方=そこい)

(塔2019年2月号掲載歌・前田康子さん選)

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

NHK俳句4月号

鳥の名を持ちて鶯餅は風

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

兼題「鶯餅」で櫂未知子さんに佳作に選んでいただきました。
(「俳句さく咲く!」)

月刊うたらば3月号「出」

眠れるよ夜が出口を塞いでも三日月ほどのあかりがあれば

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

月刊うたらばテーマ「出」に採用していただきました。

2019年2月28日 (木)

1月号の歌(2019)

秋晴れの洗濯物の幸を言う母がいちばん満ちたりている

着ぐるみのなかの哀しみ眠り方を忘れた夜のこどもがひとり

ひとり死ぬことを孤独死と呼ぶことの微かな違和を言葉にできず

秋分の日の夕暮のバスに揺れるほつれの目立つ日の丸の旗

失踪を蒸発と呼ぶ昭和にも人は瞬時に消えたりしない

ドアポストの夕刊抜けば玄関に金木犀の香が入りくる

さきさきと菜を切るとき薄命の咲姉ちゃんが思い出になる

(塔2019年1月号掲載歌・真中朋久さん選)

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

6首目の歌を百葉集に選んでいただきました。

NHK俳句3月号

声に泣き仕草に笑ふ初芝居

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜

兼題「初芝居」で宇多喜代子さんに入選十句に選んでいただきました。(1月6日放映)

宇多さんの評
「たいていの芝居は役者の台詞や所作の巧さが客席を楽しませる。そこを簡潔に表現した句。」

なかなかむずかしい兼題でした。

月刊うたらば2月号「銀」

靴音はカ行でひびく暖色の葉をちりばめた銀杏並木に

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

月刊うたらばテーマ「銀」に採用していただきました。

«12月号の歌