2019年2月28日 (木)

1月号の歌(2019)

秋晴れの洗濯物の幸を言う母がいちばん満ちたりている

着ぐるみのなかの哀しみ眠り方を忘れた夜のこどもがひとり

ひとり死ぬことを孤独死と呼ぶことの微かな違和を言葉にできず

秋分の日の夕暮のバスに揺れるほつれの目立つ日の丸の旗

失踪を蒸発と呼ぶ昭和にも人は瞬時に消えたりしない

ドアポストの夕刊抜けば玄関に金木犀の香が入りくる

さきさきと菜を切るとき薄命の咲姉ちゃんが思い出になる

(塔2019年1月号掲載歌・真中朋久さん選)

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6首目の歌を百葉集に選んでいただきました。

NHK俳句3月号

声に泣き仕草に笑ふ初芝居

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兼題「初芝居」で宇多喜代子さんに入選十句に選んでいただきました。(1月6日放映)

宇多さんの評
「たいていの芝居は役者の台詞や所作の巧さが客席を楽しませる。そこを簡潔に表現した句。」

なかなかむずかしい兼題でした。

月刊うたらば2月号「銀」

靴音はカ行でひびく暖色の葉をちりばめた銀杏並木に

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月刊うたらばテーマ「銀」に採用していただきました。

2019年1月21日 (月)

12月号の歌

八月は肩で息する物陰に土偶のような生を潜ませ

思い出しながら頭の中に書く崖という字が景色に変わる

天気予報は気象情報と名を変えて徐々に厚みを増すこの世界

不変かもしれず普遍かもしれず君の言葉が身体をめぐる

じんわりと頭が痛む台風は南の海に生まれたばかり

百日紅の花の尖りのももいろはほとんど夢でできていました

(塔2018年12月号掲載歌・栗木京子さん選)

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10月号6首目の歌を作品合評で取り上げていただきました。(紀水章生さん・紫野春さん)

2018年12月28日 (金)

11月号の歌

はねる水ふれる食器に開くドア病床に聞く音は明るい

聞き慣れぬ「命にかかわる」という言葉この夏の気象情報にあり

水菓子のひかりに口をふさがれて永遠の秘密となる夏の些事

ここではないいつかどこかの物語それを信じて生きていこうか

ワンピースは夏の正装顔上げて歩く平均台を行くように

よろこびをモザイクにして敷石にするから君は渡って 笑って

(塔2018年11月号掲載歌・三井修さん選)

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9月号6首目、7首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(出奈津子さん)

月刊うたらば12月号「家」

秋晴れの洗濯物の幸を言う母がいちばん満ちたりている

空心菜の名のさびしさと明るさよ 子は三月に家を出るもの

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月刊うたらばテーマ「家」に2首採用していただきました。

2018年11月27日 (火)

10月号の歌

榎の葉しか食べられずオオムラサキ細き蛹に変わる葉の裏

こぼれおちるように飛びたつ虫たちの地球は青いみずうみだろう

四匹が鍋に頭をつっこんで猫の昼餉は夏草の上

天の川みたいに啜るところてんぴちぴちはねて夏がはじまる

モノローグがダイアローグになるまでの遥かな歩み 君と出会った

問う人のまなざしのただまぶしくて開いた夏の傘にかくれる

(塔2018年10月号掲載歌・小林幸子さん選)

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NHK俳句12月号

桃食めばやはらかき水ふかき水

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兼題「桃」で星野高士さんに佳作に選んでいただきました。

2018年10月22日 (月)

9月号の歌

「ポケモンジムになりました」という張紙をイオンの壁に見る春の昼

長生きをリスクと告げるCMに振り向く とおい母を思って

人間にだけあるという長い日々 老後をなだらかに生きてゆく

淡々と少女ふたりの髪ゆれて五月のバスを待つ木下闇

止まるときバスは左に傾いてひとりの肩をさびしくさせる

ためらいもなく草原を踏む素足こどもがこどもを追いかけてゆく

押しやればぴんと張りつめ何もかも拒むかたちに傘はふくらむ

雨音にかくれた街のしずけさが湿った靴の裏にしみこむ

(淡々=あわあわ)

(塔2018年9月号掲載歌・池本一郎さん選)

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7月号7首目の歌を選歌欄評で取り上げていただきました。(山上秋恵さん)
山上さんには以前も評をいただいたのですが、明るさを掬って読んでくださることをうれしく思います。

NHK俳句11月号

なつかしき声かさなりて菊の宴

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兼題「重陽」で宇多喜代子さんに佳作に選んでいただきました。
「菊の宴」は「重陽」の傍題です。

名を呼んでほしいと言はず秋桜

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兼題「秋桜」で櫂未知子さんに佳作に選んでいただきました。

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